東京家庭裁判所 昭和53年(少)1185号 決定 1978年5月31日
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(罪となるべき事実)
本件記録中の昭和五三年二月六日付検察官送致書が指示する司法警察員送致書記載の犯罪事実(但し、窃盗犯罪一覧表番号一の事実中、「午前一〇時〇分ころ」とあるのを「午前一〇時三〇分ころ」と訂正する)、及び同年五月一〇日付司法警察員作成の送致書記載の審判に付すべき事由のとおりであるから、これを引用する。
(適条)
窃盗の各事実 刑法二三五条
住居侵入未遂の事実 刑法一三二条(一三〇条)
有印私文書偽造の事実 刑法一五九条一項
有印私文書偽造行使の事実 刑法一六一条一項(一五九条一項)
詐欺の事実 刑法二四六条一項
虞犯の事実 少年法三条一項三号イ、ロ
(処遇の理由)
次に付加するほか、鑑別結果通知書及び当家庭裁判所調査官○○○○の昭和五三年五月二九日付意見書の理由記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。
少年は、自信に乏しく依存欲求の強い、更には自己中心的で抑制心に乏しく、そのため被害感や不満を持ち易く逃避行動に走り易い、場合によつては虚言を用いてその場のがれをするなど、総じて未熟な性格である。そして調査官の調査面接の翌日更に窃盗を繰り返すなど、規範意識にも欠け、生活全般に遊興性を強めつつある現状においては再非行の可能性は大きい。加えて、少年の保護者両親も少年の現状を持て余している状況にあつて、その監護に期待することは不可能と認められ、他に適当な資源は見当らない。そこで少年を施設に収容したうえ、そこでの専門家による日常的で厳格な生活指導を通して、基本的な生活習慣を身につけさせ、更には能力に見合つた学力を修得させ、もつてその健全な育成を図ることとする。
ところで少年の性格形成のうえで、少年の認知する父親及びその像(厳格さ頑固さ、弟妹との差別的態度等々)が大きな影響を及ぼしているものと考えられるので、少年院におかれてはできるだけ早期から保護観察所と緊密な連絡をとつたうえ、両親特に父親と少年との情緒的結び付きを正常に戻すよう十分なる調整が図られるよう期待する。
よつて少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条三項を適用して主文のとおり決定する。
(原審決定引用の犯罪事実)
一 昭和五三年二月六日付検察官送致書が指示する司法警察員送致書記載の犯罪事実(編略)
二 昭和五三年五月一〇日付司法警察員作成の送致書記載の審判に付すべき事由
少年は、昭和五二年三月江戸川区立○○中学校を卒業し、同年四月から都立○○工業高校定時制に進学したが、盗みぐせ等素行不良から一年で退学処分となつた。
少年は、全日制高校の受験に失敗し、定時制高校に入つたが、昼間ぶらぶらしているうちに盗みを覚え、これを繰返してきた。
最近では、保護者の監護にも全く服さず、母親に対し、
「うるせえなあ、てめえなんか親でもなければ子でもない」と暴言をはき、足げりする等の行為をするようになり、ますます非行化の傾向にあり、少年をこのまま放置すると、生活に困つて将来、窃盗、暴行、恐喝等の罪を犯すおそれがある。